作業工程

実は私もこれまでお二人の先生に金継ぎのご指導をいただきました。
先生方もそれぞれに師事された方がいて、話を伺うと金継ぎのやり方は「人によって違う」そう。

正解はないので、漆の取り扱いだけ注意しましょう。
乾く前ならやり直しもできます。

大まかには以下の流れです。

1)下準備

器に不純物が付着していると漆の接着が弱まり、中でカビたりすることもあるので、あらかじめ洗っておきましょう。

割れた器の場合、断面が鋭利なので、やすりで角を落とし接着しやすくすします。
金属やすりで軽くひとなでする程度で十分です。

テレピン油で薄めた透漆を破片の断面に塗り、ウエス(布)で拭き取ります。
これも接着しやすくするためです。

ヒビが入った器の場合、ヒビのラインに沿ってローターで傷をつけます。
漆との接合面を増やすイメージです。

テレピン油で薄めた透漆を、割れ目に流し込むイメージで塗り、しばらく放置してから布で拭き取ります。
何回か繰り返すことで割れ目に漆が浸透します。

2)割れた器を接着

割れた破片の断面に麦漆を塗り、接着してマスキングテープで固定します。
麦漆とは、ガラス板上で「小麦粉(強力粉)+水」をヘラで3分ほど練ってから(グルテンが大事)、同量の透漆を加えてさらに練ったペースト状のものです。

大きな欠けの場合は、刻苧漆(こくそうるし)で形成し再現します。
刻苧漆は、ガラス板状で「麦漆+木粉」をヘラでよく練ってつくります。

3)錆漆で隙間を埋める

錆漆は、ガラス板状で「砥粉+水」をヘラで練ってから、同量より少し少ない程度の「透漆」を加えてさらに練ってつくります。

4)表面をなめらかに整える

麦漆は数日から1週間ほどすると固まりますので、はみ出たところをナイフで削り落とします。

そこに錆漆を塗布し、陶磁器と麦漆の間にわずかにある隙間を埋めていきます。
小さな欠けやヒビ割れの場合は、麦漆の工程は不要で、錆漆で隙間を埋めます。

錆漆も数日から1週間ほど固め、はみ出た部分をナイフや紙やすりで削り滑らかに整えます。
この工程は一度にきれいにできないことも多いので、削っては錆漆を塗り、固めて削るという工程を繰り返します。

ここでなめらかにすることが後々の仕上がりを大きく左右しますので、がんばりましょう。

5)中塗り

表面が滑らかになったら、テレピン油で薄めた透漆を塗り、布で拭き取り、さらに色漆を塗ります。
厚く塗るとシワになるので適量に。

塗り終わったら段ボールに入れて数日から1週間ほど固めます。
漆が固まるのに温度と湿気が必要なので、段ボール内側を霧吹きで濡らしたり、中に濡れた布巾を入れておきます。

6)やすりで研ぐ

中塗りが乾いたらやすりで研ぎます。

この5)、6)の作業を2回ほど繰り返します。
合計3回中塗りをすると仕上がりがきれいになりますが、固まるのに各回数日から1週間かかるので、状況によって2回でもいいと思います。

7)金属粉を蒔く

仕上げの漆を塗り、段ボールで10分ほど保管し、表面が固まりかけたところに好みの金属粉を撒きます。
本来は真綿でやるようですが、私は道具の紹介で書いたようにアイシャドウブラシで代用しています。

蒔き方は、筆にたっぷりと金属粉を含ませ、塗布する場所の近くにはたき落としてから、器を手で揺らして漆の上に均等に乗るようにします。
漆を筆で直接触らないように注意しましょう。

きれいな乾いた筆で余分な金属粉を払い、段ボールに保管します。
数週間ほどしっかり乾燥して仕上げます。
金属粉を払う時、私は箱の中で作業して、払った金属粉を回収してまた利用します。

金継ぎ器の取扱い

一度割れたり欠けたりした箇所は、金継ぎしたとはいえ脆弱です。
割れる前よりも丁寧に扱いましょう。
一度は壊れたものだということを忘れずに、具体的には以下の点に注意します。

  • ・電子レンジ、食洗機、オーブン、直火は使えません。
  • ・洗う時にはクレンザーなどの研磨剤や、長時間の浸水は避けましょう。剥離の原因になります。
  • ・金属粉を蒔いた金継ぎの場合、使用しているうちに金属粉がはがれて漆が見えてくることも。私はそれをふくめて「景色」だと捉え、あらかじめ後から漆が見えることを考慮して仕上げの漆の色を考えます。

参考書籍

金継ぎをやると、漆が知りたくなり、器が知りたくなり、お茶事が知りたくなり、好奇心エンドレスになります。
解説書もたくさん出ていますので、参考にして自分のやり方を追求するのが楽しいので、いくつか本を紹介します。

最後の一冊は、金継ぎとは直接関係ありませんが、茶事が日本の季節と密接に関係があるさまが漆の世界と重なったので。

道具の調達(オンラインショップ)

道具は100円ショップやホームセンターなどで、ある程度揃えられます。
漆などの材料は、以下のサイトが参考になります。
金継ぎの方法を紹介している漆屋さんもあるので、ぜひ合わせてご覧ください。

鹿田喜造漆店

鹿田喜造漆店 https://www.shikataurushi.com/

箕輪漆行

箕輪漆行 https://urushiya.ocnk.net/

 

思い出しながらつらつらとまとめていたらとても長くなりました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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