シルバーアクセサリーに限らず、金属でオリジナルのアクセサリーをつくるというのは大変そうだと思ってらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、金属に火を入れて、それを伸ばしたり曲げたり・・・というのは、やはり技術と工具が必要です。
さらに、金属を削りながら、動物やスカル、薔薇などのモチーフをつくるのはとても大変です。

 

そのようなモチーフなどのアクセサリーをつくる場合には、金属(地金)そのものからつくるのではなく、「ワックス」というロウの塊を削ったり盛ったりしながら原型をつくり、「鋳造(キャスト)」をしてアクセサリーをつくる「ロストワックス」という手法をとります。

私自身も最近は地金からつくるのがめっきり少なくなり、この手法をメインにしてつくっています。
やはり思うように形づくれるのがなんといっても魅力。

今回はそのロストワックスの原型を制作するための道具をご紹介いたします。

ワックス

チューブワックス(上)とブロックワックス(下)。

ワックスにもいくつか種類があり、写真の四角い塊のブロックワックスや、真ん中に穴が空いたリング用のチューブワックス「ハードワックス」と呼ばれています。

ブロックワックスはペンダントやバングル、パーツづくりなどに使います。
写真のサイズは大きな四角形ですが、これを薄くスライスした「スライスワックス」もあります。

 

リング用のチューブワックスの形には、「真円」、「穴ズレ」、「印台」があり、それぞれ薄型、厚型・・・などとまた種類があります。

左・真ん中が印台、右が真円。
穴ズレは真円の空いた穴が下にずれているもの。

印台はトップの部分にボリュームのある場合だったり、真円はリングがほぼ同じ厚さのときなど、つくるリングの形によって使い分けます。
必要なリングの幅を切ってすぐに使えるというのがチューブワックスです。

 

このハードワックスにも上記の写真のように、「ブルー」「パープル」「グリーン」の3種類あり、それぞれ「ソフト」、「ミディアム」、「ハード」と、柔らかさが違います。

入手しにくそうなのですが、最近はこれに加えて「ターコイズ」「ゴールド」「オレンジ」があるようです。
(①ブルー②パープル③ターコイズ④グリーン⑤ゴールド⑥オレンジ、の順です。)

硬さに違いはありますが、融点(ワックスが溶ける温度)は115〜118℃で、それほど大きく変わりません。

 

初めてつくる場合はハードですと制作中に折れてしまうことがあるので、柔らかいブルーのワックスがよいのですが、ブルーは柔らかいためにちょっとべたっとした感じがあるので、私のおすすめはパープルです。

グリーンでも問題ありませんが、硬いために折れやすい、ということに加えて、ちょっと削りすぎてしまったので、元のボリュームに戻すためワックスを盛った際に、その盛った部分のワックスが元のワックスよりも柔らかくなってしまい、形づくりにくくなってしまうんです。
パープルのワックスを盛っても、元のパープルの硬さがなくなる、という感じ。(個人的な意見ですが。)

そのため、土台をパープルで制作、修正する場合は硬めのグリーンを盛っています。
となると、グリーンで制作、盛って修正した場合、さらに硬いワックスがないんですよね。
(以前は、ブルー、パープル、グリーンしかなかったので・・・)

 

ワックスにはハードワックスの他にも種類がいくつかあり、私は土台をハードワックスでつくり、モチーフは「ソフトワックス」を使用することが多いです。

グレーの歯科用のワックスがお気に入り。

最近はソフトワックスではなく、「モールドワックス」「粘土状ワックス」「レリーフワックス」などと呼ばれているようですが、メーカー の違い、溶ける温度での違いで、種類がいろいろとあります。

どれも融点が低く、ハードワックスよりもワックスの増減がしやすくて形づくりやすいのが特徴です。
手の温度でも変形できてしまうワックスもあります。

ハードワックスは盛った時に土台のワックスと熱したメス(もしくはワックスペン)でぷすぷす刺してきちんとつなぎ合わせるのにコツが必要で、きちんとついていないと鋳造に影響が出てしまうのですが、こちらは初めの盛りの際に地に刺すだけでよく、あとどんどん乗っけていけます。
ソフトワックス同士であれば、熱々のワックスをただのせていくだけでOKなんです。

ですが、柔らかい=ベタつくため、ヤスリで磨くことができない。
それ故、きっちりした形にはならない、削ったカスがいろいろなものにくっついてしまう、というデメリットがあります。

また、細かな傷がついていることも多く、金属になって研磨するときにその傷を取る=けずれてしまうことを考えて成形していく必要もあります。

 

写真の赤いワックスはベタつきが強いため、私はグレーのワックスを混ぜて使っています。
グレーのこのワックスは、実は歯科用のワックスで、しゃりしゃりした削り感が心地よいのですが、単体で使うと硬めのため、折れやすいのが欠点。
それにベタつきの強い赤ワックスを混ぜると、制作がしやすいものになります。

部分によって、色を変えてわかりやすくしています。

また、混ぜることでできる、赤、濃いピンク、薄いピンク、グレーの色を部分部分で分けると成型時に見やすくなる、というメリットがあります。(写真参照)

 

他には「インジェクションワックス」という、ゴム型に注入するワックスがあります。
インジェクションワックスもいくつか種類があり、鋳造業者さんにより、使用しているワックスやその配合が違います。

削り出し

糸のこ&のこ刃

  • 右が糸鋸フレーム

  • ワックス用のこ刃は刃がねじれています。

糸鋸フレームと通常ののこ刃は地金になってからも使用しますが、ワックス用ののこ刃は普通のノコギリの刃とは違い、ワックスがつまらないようにねじれたものになっています。
スパイラル糸鋸刃、といった名前かと思います。)
最小ロットが1ダーズ12本入っているので、1度買うとかなりもちます。

作業台

本来は下の写真のように彫金机などに「すり板」というものをつけて制作するのですが、彫金机などは普通はすぐに買いませんし、ヤスリをかける際はすり板に押し付けたりするので、動かない机、台などが必要になります。

すり板

こんなものもあるのですが、

つけれる机もなかったり・・・作業的にいい具合のものがなっかたのです。
すり板にワックスを押しつけてヤスリをかけるので、それなりに動かないものでないと難しい。
そして下にワックスなどの削りカスを置く「受け」が必要です。

 

そこで、私はすり板を使わないときはゴム台を使いはじめました。

手軽に持ち運びできるので重宝します。

ハードワックスの切り出しには少々力とコツが必要ですが、家中、移動ができるのでとても楽ちん。
すり板で制作する気分でないときは(笑)、このゴム台です。

ワックスの粉受けは100均一で売っているトレーに、滑り止めをつけたもの。

トレーは金属のほうがなんとなくおしゃれなんですけど、ライトをつけるとその光が反射してしまって目がやられるので、プラスチックがおすすめです。
ゴム台は500円ほどで購入できます。

リングサイズ棒&リーマー

  • 真ん中がリングサイズ棒、左2つがリーマー。

  • 合体させ、先の細い部分を
    ワックスの穴に入れて回して削っていきます。

リングをつくる際に使います。
リングサイズ棒にはサイズによって線が記されています。

チューブワックスを必要なリングの幅にカットし、リングサイズ棒で現在のサイズを確認しながらリーマーでリングの穴を広げていきます。

リングサイズ棒は現在はアルミ製、プラスチック製があるようです。
鋳造後にリングをはめ、周りからゴムのハンマーで叩いて形を整えるので、私は鉄製のサイズ棒を使っています。(というか、昔は鉄製しかなかったんですよ...)
年季が入りすぎて錆びていますが・・・。

ヤスリ

これぐらいあれば制作が可能です。

ヤスリもワックスの目がつまらないように目の粗い、ワックス専用のヤスリがあります。
左から2番目、3番目のものがそれになります。(1番左は材木用の粗いヤスリ。)
2番目のものは持ち手の方もヤスリになっているので「プロペラヤスリ」と言います。

ワックス用のヤスリの種類は多くなく、細身のものがないので、そのほかのヤスリは、実は普通のやすりです。(100均のものもあります。)
あまりめが細かいと詰まってしまうのですが、金ブラシなどでたまに掃除してあげれば問題なく使えます。

大きく削るときはもちろん専用のヤスリの方がよいです。
どれもハードワックスを削るとき専用で、金属の削り出し用のヤスリとは分けています。

スポンサーリンク
おすすめの記事